帝國海軍の駆逐艦(8) 





陽炎級[甲型駆逐艦]
軍縮条約の期限切れを考慮して建造した朝潮級も速力・航続力に不満があるとして軍令部はそれ以上の性能を有する駆逐艦の建造を要求した。
要求は特型駆逐艦と同程度の艦型と兵装。最高速力36ノット。航続力18ノットで5,000海里以上。
しかしこの要求を満たすには2,700t以上の排水量が必要との艦政本部側の回答であった。
このため性能要求を下方修正して計画されたものが本級であったが、結果的には速度以外の点は軍令部の要求どおりの艦となり、条約に縛られる事無く建造されたことによって非常にバランスの取れた駆逐艦となった。

1937年(昭和12年)の第3次艦艇補充計画で18隻分の予算を、1939年(昭和14年)の第4次艦艇補充計画で4隻分の予算を確保している。ただしこのうち最初の18隻の内の3隻分は戦艦大和級建造に際しての規模欺瞞用にダミーとして確保された分である。

大戦の戦訓による改修工事も行われたが、都合3回に及ぶ戦訓改修工事により最終的には全艦針ねずみのように対空機銃わ装備したといわれている。ただし、これらの機銃は適切な射撃指揮装置を装備していない為あまり役にたたなかったとも言われている(これは日本海軍の全てに共通していえることであるが)


理想的な大型艦隊駆逐艦として期待された本級も当初想定したような戦いの場は無く、次第に消耗していった。終戦まで残ったのは唯一隻であり、その艦を雪風という。
雪風は他に例を見ないほどの幸運艦として知られ、大戦中の殆どの主要海戦に参加し常に最前線にありながらも、被害らしい被害を受けることなく、生き残っている。

また本級の最終艦に秋雲が存在する。
秋雲は長らく夕雲級と言われてきたが、最近の資料とにより、陽炎級であると判明しているので、本級に含めるものとする。



陽炎級の要目(開戦時)
基準排水量 2,000t
全長(L) 118.5m
水線長(W.L) 116.2m
最大幅(B) 10.8m
主機 艦本式タービン2基2軸
52,000馬力
速力(K.NT) 35ノット
航続力 18ノット/5,000海里
武装 主砲 12.7p連装砲*3基
機銃 25o連装*2基
魚雷 61p4連装発射菅*2基
(搭載魚雷16本)
爆雷 投射機*2基
同型艦 19隻



(各艦の戦歴)

陽炎 第十八駆逐隊第十五駆逐隊を参照

不知火 第十八駆逐隊を参照

黒潮 第十五駆逐隊を参照

親潮 第十五駆逐隊を参照

早潮 第十五駆逐隊を参照

夏潮 第十五駆逐隊を参照

初風 第十六駆逐隊を参照

雪風 第十六駆逐隊第十七駆逐隊を参照

天津風 第十六駆逐隊を参照

時津風 第十六駆逐隊を参照

浦風 第十七駆逐隊を参照

磯風 第十七駆逐隊を参照

浜風 第十七駆逐隊を参照

谷風 第十七駆逐隊を参照

野分 第四駆逐隊を参照

第四駆逐隊を参照

萩風 第四駆逐隊を参照

舞風 第四駆逐隊を参照

秋雲
1941年9月27日 浦賀船渠で竣工
開戦時 第5航空戦隊直衛としてハワイ作戦に参加
1942年2月 インド洋作戦に参加
1942年4月10日 第10戦隊第10駆逐隊に編入
1942年6月 ミッドウェー海戦に参加
1942年10月26日 南太平洋海戦に参加
1943年7月29日 キスカ島撤収作戦に参加
1944年4月11日 セレベス海で米潜レッドフィンの雷撃を受け沈没