帝國海軍の重巡洋艦(3)





高雄級  
 

昭和2年度計画によって建造された巡洋艦であり、基本的には妙高級の改良型である。
主な改良点として第1砲塔から第5砲塔間の距離をさらに詰めることにより、より一層の集中防御を行っている。
また主砲の仰角を大きく取り、対空射撃が可能になっている。
水雷兵装も建造当初より上甲板に旋回式発射管を装備し、被弾時の被害を抑えるようにしている。
最大の特徴は艦橋であり、運用上の要求から射撃式装置・通信装置等の設置要求により、非常に大きな艦橋となってしまった。
これにより、砲戦時の標的となる部分が大きくなったとして酷評されたが、実際に運用する側としては非常に使い勝手が良かったという。また実際に戦時中、これによって弊害が発生したわけではなく、結果的には良かったといわれる。
ただし、1・2番艦の高雄・愛宕は戦前の第1次改装において艦橋のコンパクト化が行われている。

この改装では他にも後艦橋を第4砲塔直前まで下げることによって、アンテナ線を延長し通信設備の強化をはかり、飛行機揚収用デリックアームを180度回転させることにより、改修前とは別艦のような艦型となった。
これらの改修は摩耶・鳥海には行われないまま戦争に突入している。

摩耶は戦時中の損傷による修理作業の際に第3砲塔を撤去して広角砲2基4門を増設しているが、鳥海はまったく改修されることなく戦っている。
その為、大型艦橋のまま従事した鳥海は、同級のなかで、もっとも指揮機能が良いため、旗艦任務につくことが多かった。(他に同級中、もっとも居住性がよく、これは建造したのが客船建造で経験が豊富な三菱が担当したためと言われている)

また開戦前に行った出師準備でバルジ内に浮力体保持のために鋼管が封入された。
これは以後バルジ内の整備が出来ないため、船体の傷みは平時以上に進んだと言われている。
 
高雄級の要目 (新造時の高雄級
 開戦時の摩耶・鳥海)
(開戦時 高雄・愛宕) (最終時 高雄)
基準排水量 11,500t 13,400t
全長(L) 203.76m
水線長(W.L) 201.67m 201.72m
最大幅(B) 18.9m 20.7m
主機 艦本式衝動式タービン4基4軸
 130,000馬力  133,100馬力
速力(K.NT) 35.5ノット 34.2ノット
航続力 18ノット/8,000海里 18ノット/5,049海里
武装 主砲 20.3p連装砲*5基10門
高角砲 12p単装高角砲*4門 12.7p連装高角砲*4基8門
(ただし換装は1942/4に実施)
魚雷 61p4連装発射管*4基
機銃 25o3連装機銃*6基18門
25o連装機銃*4基8門 25o連装機銃*6基12門
25o単装機銃*30基
13o連装機銃*4基8門 13o連装機銃*2基8門
航空兵装 カタパルト2基 水偵3機
(開戦時 水偵1機 観測機2機)
カタパルト2基 
水偵1機 観測機2機
同型艦 4隻 高雄・愛宕・摩耶・鳥海



(各艦の戦歴)

高雄
1932年5月31日 横須賀工廠で竣工
1939年8月 近代化改装工事完了
1941年11月 出師準備工事完了
1941年12月8日 第2艦隊第4戦隊に所属
マレー作戦を支援
1942年5月 対空兵装の強化
1942年6月 アリューシャン攻略作戦に参加
1942年8月24日 第2次ソロモン海戦に参加
1942年10月26日 南太平洋海戦に参加
1942年11月 第3次ソロモン海戦に参加
1943年8月 対空兵装・電探等の装備を追加
1944年6月19日 マリアナ海戦に参加
1944年10月23日 レイテ沖海戦に参加
米潜ダーターの雷撃を受け中波
1945年7月31日 シンガポールで英豆戦艦EXの襲撃により大破
終戦時 行動不能で残存
1946年10月1日 英軍より処分
愛宕
1932年3月30日 呉工廠で竣工
1939年10月 近代化改装工事完了
1941年11月 出師準備工事完了
1941年12月8日 第2艦隊第4戦隊に所属
マレー作戦を支援
1942年5月 対空兵装の強化
1942年6月 ミッドウェー作戦に参加
1942年8月24日 第2次ソロモン海戦に参加
1942年10月26日 南太平洋海戦に参加
1942年11月 第3次ソロモン海戦に参加
1943年8月 対空兵装・電探等の装備を追加
1944年6月19日 マリアナ海戦に参加
1944年10月23日 レイテ沖海戦に参加
米潜ダーターの雷撃を受け沈没
摩耶
1932年6月30日 川崎造船神戸で竣工
1937年12月 儀装改善工事を実施
1941年9月 出師準備工事完了
1941年12月8日 第2艦隊第4戦隊に所属
マレー作戦を支援
1942年4月 対空兵装の強化
1942年6月 アリューシャン攻略作戦に参加
1942年8月24日 第2次ソロモン海戦に参加
1942年10月26日 南太平洋海戦に参加
1943年3月 アッツ沖海戦に参加
1943年11月 ラバウルで空襲を受け被弾・損傷
1944年4月 損傷修理完了・対空兵装の増強
1944年6月19日 マリアナ海戦に参加
1944年10月23日 レイテ沖海戦に参加
米潜デーすの雷撃を受け沈没
鳥海
1932年6月30日 三菱造船長崎で竣工
1937年7月 儀装改善工事を実施
1941年11月 出師準備工事完了
1941年12月8日 南遣艦隊旗艦としてマレー作戦を支援
1942年4月 ベンガル湾北部機動作戦に参加
1942年5月 対空兵装の強化
1942年6月 ミッドウェー作戦に参加
1942年7月 第8艦隊旗艦となる
1942年8月8日 第1次ソロモン海戦に参加
1943年8月 第2艦隊第4戦隊に復帰
1943年9月 対空兵装・電探等の装備を追加
1944年6月19日 マリアナ海戦に参加
1944年10月23日 レイテ沖海戦に参加
米軍の爆撃で損傷・駆逐艦藤波の雷撃で処分